Voiceのセミナーに魅かれる

大学3年の後半から、自己啓発セミナーと呼ばれるものに夢中になり、その興味はどんどん深まっていった。

前回の記事で触れたアートセラピープログラムをベーシックとアドバンスの2回続けて受けたが、大きく変わることはなかった。しかし、自分の奥に眠る感情や、なぜ自分が人の目を気にしたり、恥ずかしがりやなのか、そして寂しさを感じる原因が、自分と親との関係にあることを知った。それが収穫としては大きかった。

その後も、FILIや心の世界や心理に関する書籍を読み、自分探しを続けた。

中でも、心の世界の先駆的な出版会社、Voiceのセミナーに興味を持った。Voiceは現在もセミナーを実施しているが、1990年前半はその全盛期で、多岐にわたるセミナーを提供していた。催眠療法、バシャールのチャネリング、レイキ、NLPなど、多種多様な内容だった。これらのセミナーの前に、無料や安価なデモンストレーションや紹介のミニセミナーが夕方から提供され、それを通じて本セミナーへの参加を促す流れが確立されていた。

私は、これらのミニセミナーに参加することが好きだった。理由は、同じような考えを持つ人たちと交流できるから。完璧に社交的で充実した人生を送っている人はこのようなセミナーには参加しない。一見、精神的には健常であっても、何か劣等感や自己変革の願望を抱える人が多く、彼らと共通の話題を共有するのは楽しい時間だった。

衝撃的なセミナーに出会う

ある日、私は衝撃的なセミナーに出会った。そのセミナーの講師は、外国人の2人組で、説明会の参加者の中には、そのセミナーの卒業生も多くいて、全体の雰囲気はとても明るかった。この2人の外国人講師は、話し方が非常に巧みで、エネルギッシュだった。テーマは「人とつながること」であった。当時、バシャールや宇宙、天使とのつながりが精神世界の流行中だったが、彼らは「宇宙と繋がる必要はない、まずは人と繋がってください」という趣旨のジョークを交えて話していた。

彼らの教えは、よくある精神世界の陳腐なものとは正反対で、感情的で、とても人間らしい温かさを感じさせるものであった。会場内も、卒業生たちが一丸となって盛り上げており、圧倒的な熱気が漂っていた。私はその雰囲気に完全に引き込まれ、何となく楽しく、自分が変わるきっかけを見つけられるのではないかと感じ、そのセミナーへの参加を強く望むようになった。

ベーシックセミナー参加初日

大学4年生の春、おそらく5月頃だったと思いますが、私はそのセミナーのベーシックコースに参加しました。参加者は意外と多く、おそらく30人ほどいたのではないかと思います。当日、セミナー会場に入ると、ロックの音楽が流れ、卒業生たちが楽しそうに踊っていました。中には小学生の子供たちや、駆け回る幼い子供たちも。ボールのキャッチボールをしている大人もいました。まるで子供の頃に体験した公園のような雰囲気でした。このような踊りや遊びからセミナーがスタートするのが、このセミナーの特徴だったのです。

しかし、私はその高いテンションに馴染めず、会場の隅へと退いてしまいました。他の参加者も同様に、会場の隅で座っている人が多かったです。

そして、講師が登場。彼も卒業生たちと同様に、ボールを投げたり踊っていました。そして、音楽が止むと、彼は以下のように話し始めました。

「ようこそ、●●のベーシックコースへ。このセミナーは、自分に気づくためのセミナーです。」

彼は会場の隅にいる私たちに次のように質問しました。

「なぜ遊ばないんですか?こんなに素敵な音楽が流れているのに。会場では子供たちが楽しそうに遊んでいます。あなたたちも、子供の頃は人の目を気にせずに遊んでいたはず。なぜ大人になった今、楽しむことができないんですか?」

また、別の受講生には次のように問いかけました。

「会場に入ってから、誰かと話しましたか?ずっと隅にいては、誰とも話せず、楽しみも半減しますよ。そういう自分に気づいていますか?」

私も彼の言葉に頷けた。楽しそうな雰囲気の中、自分は傍観者のままで、人に話しかける勇気もなかった。

セミナーはその後、ルール説明に移り、予定通りに進行していきました。途中、講師の説明を交えながら、人とのコミュニケーションを中心としたセッションが多かったように思います。しかし、具体的な内容は詳しく覚えていません。その日のメインテーマは「ウォーミングアップ」ということで、深い内容はまだ触れられていなかったように思います。

ベーシックセミナー2日目

ベーシックコースは2日間で行われ、今日はその最終日であった。講師は、「何か問題や悩みを抱えている人はいますか?」という質問を投げかけました。参加者たちはそれぞれ自分の悩みや問題を話し始め、講師の外国人がそれに対して質問したりフィードバックを与えたりし、参加者が自分の内面に向き合うように誘導していました。

このセミナーでは、敬称を用いることはなく、下の名前で呼び合うことが慣例となっていた。講師も受講生を「たけし」や「くみ」のような下の名前で呼びました。

特に講師の多くの質問の中で、私が印象に残ったのは
「あなたは今、何を感じているの?」
という質問でした。この質問は非常に頻繁に繰り返されました。私は自分の感情に正直に向き合い、どんな感情を抱いているのかを感じるよう努めました。講師はまた、「考えずに感じて」という言葉も度々強調していました。

セミナーの終盤には、自分の感情や思いを体や声を使って表現するワークが行われました。

参加者全員と打ち解ける感覚

セミナーに参加する理由や目的は人それぞれだと思う。自分を変えたい、新しいことを学びたい、心を癒したいなど、参加する動機は様々である。しかし、多くの人々、私も含めて、潜在的な目的として「仲間を増やしたい」「人と仲良くなりたい」「人と交流したい」という思いがあるのではないだろうか。セミナーがただの手段でなく、人との触れ合い自体が目的であるとも言える。

私自身、そのような目的を持ってセミナーに参加していた。大学のサークル活動に参加する動機と変わらない。大学時代、友人が少なかった私は、人との繋がりを求めていたのだ。

この2日間で、参加者全員と交流することができ、セミナーの2日目が終わるころには、私たちは打ち解けていた。