愛読の雑誌「FILI」との出会い
このころ僕は「FILI」という雑誌を愛読していた。
「FILI」とはニューエイジや精神世界、心理療法を紹介する雑誌で、毎月1回発行されていた。
僕は横浜の地下にある本屋で、毎月必ずこの雑誌を購入していた。
巻末にはセミナーの紹介も掲載されていた。
当時、インターネットはまだ普及しておらず、精神世界の最新情報を得る手段としてこの雑誌は非常に価値があった。そして、巻末に紹介されているセミナーに僕は何度か参加した。
この頃の僕は、吃音のような心の問題を抱えていたが、同時に彼女が欲しかった。それは男性としての本能的な衝動なのかもしれない。
しかし、引っ込み思案で、大学やアルバイト先で女の子に声をかけることができなかった。
今、結婚して子供がいる現在でも、妻以外の女性と話すのは少し苦手で緊張する。当時の僕は「彼女ができないのは、潜在意識的に女性を拒否しているのでは」と密かに感じていた。
もしかしたら、僕は直観的に、このような心理療法を通して自分の思い込みを解消すれば、自分にもパートナーができるのではと思い始めていた。
確たる根拠はなかったが、以前参加した和尚の瞑想会で、自分の中にある怒りや深い悲しみに気付き始めていた。
そして、偶然「FILI」で紹介されていたアートセラピーのセミナーに出会った。このセラピーはグループで行うもので、タイトルは『潜在意識を知る、そしてすべてが手に入る』のようなキャッチフレーズがついていた。通常の心理療法とは違い、一般の人々を対象にしており、心理療法に加えて自分の欲しいものを手に入れる手助けとなるセラピーだった。
直感的に、このセミナーに参加する価値があると感じ、夕方の短時間のセミナーへの参加予約をしたのだった。
夕方のセッションと「エンロール」への誘い
夕方のセッションは、確か2000円くらいで設定されており、非常にリーズナブルな料金だった。そこで、自分も参加してみることにし、夕方19:00頃の開催を見込んで、横浜から遠く東京の平井まで足を運んだ。
セッションでは、主催者の方から今後2日間のセッションへの参加を強く勧められた。当時の僕は「エンロール」という言葉や、このようなセミナーのスタイルを知らなかったので、少々戸惑った。特に、勧められていたベーシックコースは7万5千円と、それなりに高額だったからだ。
その日は即座に返答をしなかったが、自分を変えたいという強い思いから、後日ベーシックコースに申し込むこととなった。
余談として、このような勧誘やエンロールは、自己啓発セミナー界隈で時折問題視され、批判の的となることもある。
しかし、お真の僕はこの業界も営利活動をしており、普通の企業と同じく営業活動が必要だと認識していた。どの会社も、営業活動をせずには成長せず、逆に存続の危機に瀕する。もちろん、過度なエンロールは問題だが、このような方法があるからこそ、セミナー業界が成り立ち、正当なビジネスとして成立しているともいえる。